マズローの欲求5段階説とは?第3の心理学から知るあなたの欲求レベル

「マズロー」
この名前、みなさんは学校の授業や仕事中に一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
特に、彼が人間の欲求を5段階層に分けた「欲求階層説」はモチベーションの話をするときには欠かせません。

そしてモチベーションといえば、仕事や勉強など私たちが何かと向き合う上で避けては通れない大事な要素。
横文字でいうと少しだけオシャレに聞こえますが、
つまるところ、「あなたは何のために頑張るの?」ということです。

この問いを考えるにあたり、実際のところ欲求階層説って何?ということを本記事で解説いたします!

まずは理論より先に、マズロー自身のことからご紹介していきましょう。



マズローとは

アブラハム・ハロルド・マズロー(1908-1970)はアメリカの心理学者で、人間性心理学の生みの親とされています。

マズローが人間性心理学を唱える以前、第一勢力であった行動主義では人間と他の動物の間に区別がなく、

第二勢力の精神分析においては人間の病的・異常な側面に焦点を当てた研究がなされていました。

そのためマズローは、両勢力とも「正常で健康な人間」を対象とする視点が欠如していることに疑問を抱き、それらへの反論として人間性心理学を唱えるに至ったといわれています。

 

人間性心理学とは

主体性・創造性・自己実現といった人間の肯定的側面を強調した心理学の潮流である。それまで支配的であった精神分析や行動主義との間に1960年代に生まれた第三の心理学とされる。

人間性心理学は、ひとりひとりを異なった独自の存在と見なすという点で、実存主義的な心理学と共通点がある。異なる点は人間性心理学が自己実現の活動を主眼とするのに対して、実存主義では人生の意味や死の意味に重点を置いていることである。(Wikipediaより)

 


 

また、彼の両親はロシアからのユダヤ系移民で、7人兄弟の長男だった彼は、両親からの期待を背負い学問の道へと進みました。

貧しい暮らし向きやマイノリティへの所属、アカデミックな分野での成功。

欲求階層説は、彼のこのような生い立ちも影響しているかもしれません。



欲求階層説とは

 

欲求階層説という言葉が初めて使われたのは、1943年にマズローが発表した論文「人間の動機づけに関する理論」でした。

この理論では、人間誰しもが持っている欲求を5つの階層構造で解説しています。

その5つが以下です。

 

  1. 生理的欲求
  2. 安全欲求
  3. 社会的欲求(帰属欲求)
  4. 尊厳欲求
  5. 自己実現欲求

 

これらの欲求をマズローは下の図のようなピラミッド構造で表しました。

 

 
このモデルでは、低次のものほど強い欲求でありそれを充足する行動が優先されます。

したがって、低次な欲求が満たされるまでは相対的に高次な欲求は抑制されるのです。

逆にいえば、低次の欲求が満たされればひとつ上の欲求が現れ、またそれが達成されるとさらにひとつ上の欲求に移行する――というように、人間の欲求はこの階層を順次上に辿っていきます。

そして、どの階層の欲求に取り組んでいるかがその人の健康度と比例するのです。

 

しかし、こうした欲求の段階性はあくまでも「基本形」であり、時には低次の欲求より高次の欲求のほうが強く発現することもあります。

また、高次の欲求に移行するのはそれよりも低次の欲求が「一定量」満たされたためであり、

全ての欲求が完全に満たされることはあり得ない、とマズローは主張しています。

 

次に、それぞれの欲求について詳しくご紹介していきましょう。

 

第1段階:生理的欲求

生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求を指します。

人間の三大欲求である「食欲」「性欲」「睡眠欲」などが当てはまり、これらが満たされなければ生命の維持が不可能となります。

ほとんどの動物がこの段階の欲求の中のみで生きていますが、人間がこの段階にとどまることはほぼありません。

 

第2段階:安全欲求

安心・安全な暮らしへの欲求を指します。

病気や怪我等、不測の事態に対するセーフティネットもこの欲求を満たす要因となります。

 

以上のように、マズローによると安全欲求は「身体的安全」のみを指しますが、私はこの欲求には「心理的安全」も含むのではないかと考えています。

日本人を例に考えてみると、自己肯定感が低い自覚がある人が全体の70%を占めており(参考:「自己肯定感が低い人に現れる7つの残念な特徴と後天的な3つの原因」)、精神状態が健全とは言えません。

この原因は、後述の承認欲求が満たされていないことだと言われることが多いですが、こちらの記事に書かれているように、幼少期~現在までに受けてきた「心理的衝撃」が大きかったからではないでしょうか。

すなわち、衣食住が整備され身体的安全は確保されていても、「精神が守られている」状態を経験できなかったのです。

したがって、尊厳欲求や自己実現欲求などの以前に、もっと根本的な「心理的安寧」を求める段階もこの安全欲求に含まれるのではないかと思います。

 

第3段階:社会的欲求

家族や友人、社会からの受容を求める欲求を指します。

具体的には集団への帰属や愛情を求めるとされる欲求であり、「愛情と所属の欲求」または「帰属欲求」とも表現されることがあります。

この欲求が満たされない状態が続くと孤独感や社会的不安感を覚えやすくなり、場合によってはうつ状態に陥ることもあります。

 

第4段階:尊厳欲求

他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求を指します。

名声や地位を求める「出世欲」もこの欲求の1つに当てはまり、外的部分を満たしたい第3段階までとは異なり、内的な心を満たしたい欲求へと変わります。また、この欲求は第3段階に存在する帰属欲求が前提となっており、他者からの評価や称賛を求める欲求に至るのは自然な流れとみなすことができるでしょう。

 

なお、承認欲求における尊厳には「低いレベルの尊厳欲求」と「高いレベルの尊厳欲求」があります。

 

第4段階にある2つのレベル

マズローによると、第4段階はレベルが2つに分かれているとしています。

 

低いレベルの尊厳欲求は、他者からの尊敬、名声、注目などを得ることによって満たされます。

高いレベルの尊厳欲求では、知性や物事への探求、自分の目標設定をしようという思いが芽生え、自己尊重の意識付け、技術や能力の習得、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価より自分自身の評価を重視します。

 

この第4段階の欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じ、逆にこの欲求を越えると、次の自己実現欲求の世界へ移ります。

 

第5段階:自己実現欲求

自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求を指します。

潜在的な自分の可能性の探求、自己啓発行動、創造性の発揮などを含み、自己実現の欲求に突き動かされている状態です。

また、第5段階だけはこれまでの欲求とは質的に異なっているとされていて、最初の4欲求を「欠乏欲求」、最後の1つを「存在欲求」として区別されています。

このように自己実現欲求を異質に扱っているだけあって、自己実現を達成できた人はそう多くありません。

それだけ自己表現を追求することは難しいということですね。

 

補足:自己超越

マズローは晩年、5段階の欲求階層のさらに上に「自己超越」の段階があると発表しています。

「自己超越」は、”目的の遂行・達成のみをただひたすらに求める” という領域を指し、見返りを求めず、自我を忘れて没頭する様を指します。

マズローによると「自己超越」の領域に達することができるのは全人類の2%程度であり、第6欲求の実現を目指すのは稀なケースとされています。(関連記事:自己超越とは?マズローの欲求5段階説には知られざる6段階目があった