生産性向上は効率化だけではない!海外から見た日本の課題と解決方法

 
世界と比べて日本の労働生産性が低いことが社会問題になっていて、最近では働き方改革が一般的におこなわれるようになりました。働き方により残業を減らし、勤務時間内の生産性を高めていこうという動きがありますが、そもそも生産性が高い状態とは効率化し残業をなくすことだけなのでしょうか?
 
今回は、簡単に誰でも理解できるように、現在の日本が抱える労働問題から、「どのように生産性向上をするべきか」について考えてみたいと思います。



生産性とは

そもそも生産性とは、成果に対して、達成するために必要だった人数と、かかった時間を割ったものが「労働生産性」です。分子にあたる「付加価値額」とは、どれだけの新しい価値が生み出されたかを表したものです。
 

また、現在の日本では、労働生産性を向上させるために、この分母に当たる「労働人数」と「労働時間」を減らすことに注力しています。ただ、「労働生産性が高い状態」がわからなければ、目指すべきゴールが見えません。
 
そこで、 一般的に「生産性が高い状態」について、具体的な例をふまえて紹介していきます。

 

生産性が高い状態とは

生産性が高い状態とは、業務の効率化により短期間で求められた成果を出すことです。また、今あるリソース(資源)は変化させずに、良質なアウトプット(成果)を増やすことも生産性が高いと言えます。
 
ただ日本で言われている生産性とは、前者の業務の効率化するためのタイムマネージメントに注目が集まっているように思われます。しかし、後者のリソースを変化させずに、より「価値のあることを生み出す創造性」を高めることにも、今後は注目していくことが必要でしょう。
 

生産性が低いと言われる日本の現状

先ほども少し触れましたが、日本の生産性が低いことが、特に社会的問題としてメディアでも多く取り上げられ「業務の効率化」や「長時間労働の廃止」に人々の関心が集まっています。
 
現在では「生産性の向上=残業を減らす」となりがちです。ただ、本当の意味で生産性を上げるとなると、業務の効率化や残業時間を減らすだけでいいのでしょうか?
 

 
実際に公益財団法人の日本生産性本部がおこなった「労働生産性の国際比較2017年版」によると、比較された35カ国中、日本は20位という結果でした。前年比では1.2%上昇したものの順位は変わっておらず、日本の一人当たりの労働生産性は81,777ドル(約834万円)と全体で21位でした。
 
そして労働生産性に最も大きな差があった産業は、無形商材である小売、飲食、宿泊等のサービス業です。また、産業別に数値をみると、化学や機械ではアメリカの生産性を上回っているにも関わらず、サービス産業は49.9%と米国の半分程で、運輸や卸売・小売業、飲食宿泊など主要分野では特に低い生産性となっています。
 
これらのデータを基に、海外と比べて日本の生産性が低い理由について、私たちが議論した結果をまとめました。
 

日本の生産性が海外と比べて低い理由

私たちは、長時間労働や、少子高齢社会による労働人口の低下が生産性が低い原因なのではないかと限定してしまっているのではないでしょうか。日本の生産性が海外と比べて低い特徴的な理由をす下記にあげてみました。
 

【日本の生産性が海外と比べて低い7つの理由】
 
・日本のサービス業は、サービスの質に見合った価格設定ができていないこと
・マーケティングやブランディングへの投資が少ないこと
・長時間労働や高品質なサービスを比較的安く提供していること
・業務効率化が目的の「守りのIT投資」が主流になっていること
・高付加価値化を行う経営者や、優秀層が適材適所に配置されていないこと
・従業員の教育に対する投資が低水準であること
・コストの低い労働力が増え続けていること

 
ここでコンビニを例にすると、現在の日本では価格競争によって小売りによる利益率が低くなっているにもかかわらず、コンビニの数は増え続けています。
 
コンビニの数が増えると、コストの低いパートタイム従業員の労働力を増やすことを最初に思いついて、効率的なシステムを考える方にまではなかなか手が回っていません。
 
これらの理由や具体例を踏まえて、生産性が高い海外に目を向けてみると、ITを利用したサービス業の生産性の高さや、優秀な人材を経営戦略に関わるところへ配置することによって、イノベーションを生みだす組織構造がうまく形成されているように見えます。



生産性を向上させるためには

生産性を向上させる方法としては大きく2つの方向が考えられます。1つは、「生産量や、付加価値を高める方法」です。簡単に言うと「人や時間を増加させずに成果を大きくする方法」です。
 
もう一つが、「生産量は変えず、成果を出すために必要なリソースを少なくする方法」です。簡単に言うと、生産量(成果)を変えず、その成果を出すために必要であった人を削減する、あるいは業務を効率化させることです。
 
それでは、それぞれの生産性向上方法について詳しくみてみましょう。

 

人や時間などのリソースを増加をさせずに成果を大きくする方法

人や時間などのリソースを増加をさせずに、分子の成果(生産量)を増加させる方法には、大きく以下の方法が考えられます。

攻めのIT投資の強化

日本では生産性を向上させ、効率化を目的としIT技術を用いたり、まだIT化されていないの分野をIT化することに注力する「守りのIT投資」が強い傾向にあります。
 
一方で、ニューヨーク連邦準備銀行(FRBN)の調査によると、1995年以降にアメリカなどの先進国で生産性が向上している最大の要因は、ITおよび通信産業の発達だと言われています。これは、新しい技術を用いたITサービスの開発や、AppleなどIT製品の開発を強化することで、新たな市場を作っていく「攻めのIT投資」です。

 

組織づくりの強化

海外と日本の企業において優秀な人(高パフォーマー)が占める割合はほぼ同じだと言われています。しかし、結果として事業収益(生産量・成果)に大きな差が生まれる原因のひとつは「組織づくり」の違いだと考えられます。
 
一般的な日本企業は、年功序列に従って人材を配置する傾向にあります。しかしグーグルなどの企業は、誰が言ったかではなく何を言ったかを大切にしていて、年齢に関係なく優秀な人を、会社の戦略や業績に大きな影響を与えるポジションに集中的に配置するのが特徴的です。

 

生産量は変えず、成果を出すために必要なリソースを少なくする方法

成果量(生産量)は変えず、その成果を出すために必要なリソース(資源)を少なくする方法は、大きく以下の方法が考えられます。

業務の「見える化」を徹底する

チームで作業をする場合は、前もって作業の進め方や段取りを可視化し共有することや、一日のタスク管理ツールなどを用いて「業務の見える化」をおこなったり、共有可能なドライブなどの効率化ツールを利用し作業環境を整理するによって、業務の無駄やミスを減らすこができます。
 

タイムマネージメントを強化する

タイムマネージメントをおこなうことで、業務時間内の無駄な時間を減らし、重要度の高いタスクに時間を回すことができより質の高いアウトプット(成果)を出すことが期待できます。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
 
今回は、改めて生産性とは業務効率化や、人員削減だけで向上できるものではないと思いました。労働人口が減る日本では、企業組織自体を見直し、新しい市場を作っていける優秀な人をどれだけ排出していけるかが鍵となりそうです。