突然ですが、みなさんは「死」について考えたことはありますか?
正直、いきなり「死」といわれても、自分とは関係がないことのように思えて、何かきっかけがなければ日常的に意識することはあまりないかと思います。
ただ、私は、ある経営者のスピーチを動画で見たことで「死」というものと自分の生き方について改めて考えるようになりました。
その動画とは、Appleの創業者でもあり、生涯を通じて世の中を驚かせ続けた経営者、スティーブ・ジョブズ氏が、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った「死」をテーマとしたスピーチです。
以下が、そのスピーチの内容を日本語で書き起こしたものになります。
「もしも今日が人生最後の日だとしたら、今日私は今からやろうとすることをしたいと思うのだろうか?」
その答えが何日も「NO」のままなら、何かを変える必要があるのだと気づくのです。
「すぐに死ぬ」という覚悟があれば、それは人生で大きな決断をするときに大きな自信となります。
なぜなら、ほとんど全ての事柄——例えば、周囲からの期待や、プライド、失敗や恥をかくことへの恐怖など——は、死に直面した時にはすべて消え去るからです。
そこに残るのは、本当に大切なものだけです。
死を覚悟して生きていれば、「何かを失う気がする」という心配をせずに済みます。
あなたは初めから何も纏ってなどいないのです。自分の心に従わない理由など、どこにもないのです。
(中略)
あなたの時間は限られています。無駄に他人の人生を生きないこと。
他人の雑音で、心の声が掻き消されることのないようにようにしてください。
そして、最も重要なことは、自分の直感に従う勇気を持つことです。
直感とは、あなたが本当に求めることを分かっているものです。それ以外は、二の次です。
いかがでしたでしょうか?正直、僕にはめちゃくちゃ刺さりました。
これは彼が2003年に膵臓癌を発症し、2004年に摘出手術を受けた後に行ったスピーチであったということもあり、偉大な経営者として、というよりも、死と真剣に向き合った1人の人間としての言葉の重みがより強く感じられました。
「人生最後の日にやろうと思えるほどに好きなことなのか」、また「情熱や直感をもっと大切にしよう」というメッセージは特に強烈で、自分が本当に大切にしたいことはなにか、と改めて考えさせられました。
「好きなこと、情熱、直感」を大切にすることは、自分のマインド次第で意識づけができるものでもあります。
「今やっていることは情熱を注げることなのか」、「自分の心に嘘をついていないか」自分自身に問いかけることをやめず、その上で1日1日を大切に生きていくことの重要性を、ジョブズ氏の言葉を読む度に感じます。
また、もとのスピーチはYouTubeにあがっています。私も何度も繰り返し聞くほどに刺激を受けられる演説なので、ぜひ一度見てみてください。きっとあなたの価値観に影響を与えることと思います。
ここまで、ジョブズ氏のスピーチについて触れてきましたが、一般の人たちが死の間際に感じることの方が身近に感じるという方もいることでしょう。
そこで、次にご紹介したいのが、アメリカの病院で80歳以上の方を対象に行われたアンケート調査です。
このアンケートは、看護師さんが「人生で最も後悔していることは何ですか?」と患者さんに問いかけたものであり、これには様々な回答が返ってきました。
その中で一番多かった回答が「チャレンジしなかったこと」だったそうです。
誰しも「もしあの時チャレンジしていたら」と思うような事柄が人生にひとつやふたつあるのではないでしょうか。
僕自身これまでの人生を振り返って、あの時諦めていなければ、今ごろどこまでいけていたんだろう…と思う瞬間があります。
心のどこかで小さな後悔として残ってしまったからこそ、このアンケート結果に納得感を持つのかもしれません。
この回答以外で、特に印象的だったものを「人生で何をしておけばよかったか」という形で言い換えると、
・自分のやりたいことをやればよかった
・他人の言う事よりも自分の直感を信じればよかった
・もっと自分の情熱に従うべきだった
上記三つの回答に共通するのは、「直感や情熱ではないなにかを優先した結果、後悔している」という点です。
忙しい日々に追われていると、直感や情熱、本当に大切なことについて想いを馳せる時間は、意識しない限り失われてゆくものです。
ただ、人生の先輩である彼らが、死を意識して初めて感じるこうした後悔は、いずれ誰もが抱くものなのかもしれません。
先ほど紹介したジョブズのスピーチにも、まさにこうした後悔を見越したような言葉がありましたよね。
『ほとんど全ての事柄——例えば、周囲からの期待や、プライド、失敗や恥をかくことへの恐怖など——は、死に直面した時にはすべて消え去るからです。そこに残るのは、本当に大切なものだけです。』
期待やプライドにとらわれず、直感や情熱に従うこと。失敗を恐れず、チャレンジすること。
彼がスピーチを通して我々に伝えようとしたメッセージが、アンケートを通してより重みを増したように感じられます。
頭では大事だと思っていても、「世の中そんなにあまくない」と諦めてしまうことは多いですよね。
ただ、「死を目前にして初めて本当に大切なものに気付いた」ということにならぬよう、たまには立ち止まって、自分の人生を見つめ直してみるのもいいかもしれません。
最後に、稀代の経営者であるジョブズ氏は仕事選びについても、以下のように述べています。
とても辛いことがあったとしても、信念を見失わないでください。
私が続けてこれたのは、自分のやっていることが好きだったというたったそれだけのことだったということをよくわかっているのです。
自分が好きなことを見つけなければなりません。
本当に自分の気持ちが満たされる唯一の道は、皆さんが素晴らしいと信じる仕事をすることにあります。
そして素晴らしい仕事をする唯一の道は、あなたがしていることを愛することなのです。
そして、それは素晴らしい関係のように年を経るにつれてどんどん良くなっていくものです。
ですから、探し続けてください。立ち止まってはいけません。
このようにジョブズ氏は、自分が好きなこと、愛せることを見つけて信念を持って生きていくことが、仕事をする上でも大切だと言っています。
もしあなたが、そんな仕事をまだ見つけられていないのであれば、今が探し始めるときなのかもしれません。
好きなことを仕事にし、信念を持って生きる。綺麗事、と目を背けるのは簡単ですが、死ぬ間際に「チャレンジすればよかった」と嘆くくらいなら、失敗を恐れず直感に従うのも悪くないように思えます。
いつ終わるかわからない人生、後悔しない選択をしていきたいものですね。
さて、ここでもう一度問います。
「もしも今日があなたの人生最後の日だとしたら、今日あなたが今からやろうとすることをしたいと思いますか?」
Stay hungry, Stay foolish.